高級シティホテルからビジネスホテル、カプセルホテル、そしてレジャーホテルと縦横無尽にホテルサービスを斬りまくる! 日本を代表する ホテル評論家 瀧澤信秋 が、いまイケてるレジャーホテルを自ら選び訪問。徹底リサーチし、ゲストに支持されるこれからのレジャーホテルを浮き彫りにしていきます。

第24回

UTILITY HOTEL cooju

(埼玉県川越市)

50%/50%のカップルズユースとビジネスユース
-首都圏観光都市の人気好感度ホテル-

 まず断っておきたい。本連載は“レジャーホテルとは何か”という基本的な問いのもと、カップルズユースの需要の取込みという視座から、業態の垣根を超えて存在感を発揮する施設への取材をまとめたものである。ゆえに、いわゆるラブホテル的施設はもちろんのこと、一般ユースの取込みも積極的にすすめるホテルなども含め4号・新法にかかわらず取り上げてきた。

 なかには、いわゆるレジャーホテルというワードを忌避する施設もあったが、レジャーホテル業界でも参考になりそうな先例的取組みというケーススタディも鑑み掲載の許可をいただいてきた。今回はまさにそのような施設であり、レジャーホテルというワードはこのホテルのどこにも出てこないが、筆者の取材の主旨を理解いただき取材・掲載について最終的に許諾いただいた。

 都心から約1時間、小江戸といわれる川越は人気の古い街並みをはじめ観光資源が豊富で、首都圏のベッドタウンにして観光都市という顔をもつ。とはいえ、宿泊施設でいえば一般的な観光都市と比較すると従前からホテルは極めて少なく、シティホテル1軒、スタンダードなビジネスホテル数軒と数える程度だった。結局、日帰りできるので観光都市でも宿泊需要は限られるなかにあって、一定のビジネスユースのニーズがあったといえよう。

 そのような川越にあって8年前の開業から異彩を放ってきたホテルが「UTILITY HOTEL cooju(ユーティリティ ホテル クージュ)」だ。

 JR川越駅から徒歩3分、駅前通りに面し気軽に立ち寄れるホテルという印象。外観は完全なビジネスホテルである。もともとビジネスホテルだった物件をカップルも含めさまざまな用途で利用してもらおうと、客室面積の拡大も含めハイセンスなリニューアルを施したとのこと。ビジネスホテルが多用途化の波の中でリニューアルするケースは昨今散見されるが、先取的な例といえよう。

 大きく開口したフロントが印象的。明るいロビースペースには“選べるシャンプー”や“雑誌”といったレジャーホテルの要素があるアイテムから、パソコンや電子レンジなどビジネスホテルでお馴染みのアイテムも並ぶ。
そんなフロント周りでは3つの盾が凜とした雰囲気を放つ。楽天トラベルのブロンズアワード2017~2019と3年連続で受賞しているホテルでもあった。

 デイユースの積極的な取込みも含めチェックイン19時以降等、レジャーホテルの要素がふんだんに採り入れた運営からも確認してみると、地域性を鑑みカップルズユースの取込みを完全に狙っているという。地元、観光に訪れたカップルによるデイユースから、繁華街という立地もあり夜の仕事に従事するゲストも多いという。JR川越駅周辺には清潔感の高い宿泊特化型ホテルは皆無だったこともありビジネス需要も旺盛、カップルズユース/ビジネスユースは半々の割合とのこと。

 客室には大画面テレビ、多様なアメニティなどこちらでもレジャーホテルの要素を見いだすことができるが、よくよく考えてみればこれらも昨今ビジネスホテルで積極採用されているアイテムだ。近年、一般のビジネスホテルが業態内での差別化という点から、レジャーホテルを意識したコンセプトを打ち出している。

 レジャーホテルへの意識といえば、川越も含めさいたま市といったエリアについてもビジネスホテルのデイユースは非常に盛んになっており、なかにはクージュのように最初からビジネスホテルのイメージではない客室といったホテルもみられる。ビジネスユースではなく完全なるカップルズユースの取込みというスタンスが垣間見える傾向だ。

 コロナ禍の状況について問うてみたところ、やはりカップルズユースに支えられたという。ビジネスユースオンリーだったとしたら持ちこたえられなかったのではないかという話に“リスクヘッジ”というワードが思い浮かんだ。レジャーホテルを取り巻く環境はコロナ禍によってまた大きく変化している。

UTILITY HOTEL cooju
埼玉県川越市脇田町17-4
TEL.049-299-5645

ホテル評論家 瀧澤 信秋
日本で数少ない宿泊者・利用者目線のホテル評論家として、テレビやラジオへの出演、雑誌・新聞連載など、多方面で活躍。著書に「365日365ホテル 上」(マガジンハウス)、「ホテルに騙されるな! プロが教える絶対失敗しない選び方」(光文社新書)など
http://www.takizawa-nobuaki.net/hotel/

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