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「東日本大震災」現地レポート

㈱マークス 代表取締役 氏家 正裕氏

3月11日(金)14時46分頃に発生した「東日本大震災」では、マグニチュード9.0、死者・不明者2万人超の未曾有の大震災として、レジャーホテル業界においても多大な被災が報告されています。
東北地方を中心にレジャーホテルの運営受託を展開する㈱マークス代表取締役・氏家正裕氏に、被災状況とともに、今後の復興に向けた課題・問題点についてレポートしていただきました。

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〈㈱マークスのスタッフが仙台港側近の公的建築物(アクセル)での被災時に撮影した写真です〉

●被災状況

 弊社は東北地区には、宮城県仙台市周辺に3軒、岩手県内陸部に2軒、福島県内陸部に1軒の運営受託中の店舗があり、その他に石巻市に1軒、コンサルティングをさせていただいている物件があります。
 幸い、弊社の運営物件では、全壊や半壊と言った、既存建物にて全く営業が成り立たないといったような被害は有りませんでしたが、震災から17日が経過した現在でも、まだ2軒しか営業再開出来ていない状況です。
 やっとライフラインが復旧したような状況で、ガソリン不足もあり、正確な被害状況が分からないと言うのが実情です。
 現在把握している被害状況で、最も被害が大きかったのは、仙台港から直線で5~6㎞内陸に入った物件でした。 地震での揺れで、地盤が大きく歪み、アスファルトや1階の構造物だけでなく、地下設備(浄化槽等)が破壊され、その後の津波で、10数センチではありますが、駐車場が浸水しました。
幸いお客様にけが人の報告は有りませんでしたが、スタッフが一名、厨房の火元確認の際にフライヤーの油でやけどを負ってしまいました。
 1Fにある作業スペース(リネン室、厨房、事務室)は地震の揺れにより、足の踏み場の無いほど物が倒れ、1名のけが人で済んだのが不思議なほどでした。
 2F客室(2F構造)内では、ほぼすべてのTVが倒れ、浴室タイルや天井の装飾材などが落下しておりました。
 なお、給水管に損傷があるので、管内に通水ができていないため、水回りの被害については把握できていません。
 その他の店舗でも建物の倒壊を引き起こすような、主要構造物に被害は有りませんでしたが、外壁タイルの落下、ドア枠の歪み、内装材の亀裂、浴室等のタイル破損、TVや備品の落下が多く有りました。
 また、上記は今までの地震でも大なり小なり見受けられる現象でしたが、今回は3軒のホテルで、浄化槽が大きなダメージを受けるという被害があったことが驚きでした。

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●営業再開の見通し

 
 地震による大きな直接的な被害の有った店舗は、ガソリン不足やそれに伴う、流通の混乱による材料不足、人口不足によって、修繕が進んでいないのが実情です。
 また、地下設備のように破損状況の確認に時間がかかる個所もあり、想像以上に復旧に時間がかかっております。
 上述しましたが、7軒の関係ホテルの内で、運営再開ができている店舗が、まだ2軒となっておりますが、その2軒も地震発生から9日後の20日と11日後の22日にやっと安全確認ができてオープン出来たといった状況でした。
 その他の店舗では、被害がほとんどなくとも、ライフライン(水道)の復旧がない為に、オープン出来ない店舗が1軒、浄化槽の修繕の為に数週間の時間を要す可能性のある店舗が2軒、浄化槽のみならず、店舗全体の修繕が必要な物件が1軒と言った状況です。
 石巻市の物件に関しては、建物被害はほぼ皆無であっても、街全体が被災し、ライフラインのみならず、都市機能が全く機能しないことで、運営再開の見通しが立たないといった感じです。

●経営・運営上の課題・問題点

 
 今回の震災で特に感じたのは、建物の被害による運営停止がもたらす、経済損失が大きい事です。
 オーナー企業、運営受託企業といった区別なく、突然、唯一の収入である「客室売上」が途絶えましたが、当然、各種支払いは発生しますので、キャッシュフローが豊富に無いと最悪資金ショートしてしまいます。
 弊社でも融資先に緊急にリスケをお願いしたり、支払い先に猶予をいただくなどの対策を打診し、概ねご理解を頂きましたが、金融機関や取引先によっては御理解いただけないところもあると聞きましたので、日頃からの注意が必要と思いました。
 建物の損壊に対しても現在の情勢から、金融機関が手厚い修繕資金の融資をしていただけるとは思えない(公的金融機関の救済融資は風営店舗には出さない方針と聞いています)ので、地震保険の加入等が今後の明暗を分けるかもしれません。
なお、しっかりと確認してはいませんが、風営法店舗の場合は、大規模修繕には制限があるので、この規制の壁も今後の障害となると思います。
 また、私も一日目は避難所で過ごしましたが、弊社のスタッフもすべてが被災し、会社機能が維持できない状況も一時ありました。
 幸い弊社は本部機能とホテル運営チームが別に有りますので、経理業務や総務業務の機能をすぐに回復させることができましたが、いまだに被災地に居る方は、手がつけられていない状況で、先が見えないで困っている方もおります。
 このような、震災による2次被害とも言える事態も有りますので、日頃からのリスクヘッジが重要と感じました。
 直接の運営上の問題点としては、今回は極度のガソリン不足や津波による被害などで、通勤の手段を無くしたスタッフが大勢おり、運営再開準備の最初の障害となったことが特異点として上げられます。
 また、修繕などで運営再開が長引けば、スタッフの雇用についても大きな問題が出てくると考えられます。
政府の支援などで雇用助成金などが準備されているようですが、そもそも雇用保険や労災加入といった基本的なことが整備されていないところもあり、今後の再開にあたり、事態を深刻にする可能性が残っていると言えます。

●その他の課題・問題点

 
 盗難については、幸い当社では、震災後すぐに精算機の現金を抜き取り、本部に輸送するなどの対策をとりましたので、大きな盗難被害はありませんでしたが、閉鎖店舗中への侵入行為などの被害は有りました。
 また、仙台市内で最も被害があったと思われる仙台新港と言われるエリアでは、津波で壊滅的な被害を受けたホテルのみに限らず、高層型の比較的に被害の少なかったホテルにも、被災直後から数日以内に精算機現金のみならず、TVやマッサージチェアまでもが盗難にあうという被害がありました。
 これはホテルに限っての事ではないようですが、このような事態に有った時でも、ある程度の防衛策をとってからの無人化が必要と言う事になりそうです。
 次に利用客の動向ですが、運営再開の前から電気通電による電話使用が可能となると、「やってますか?」等の連絡がひっきりなしに入りました。
当初は、ライフラインの不通によるお風呂需要や、ご自宅等の被災での避難先としての需要と考えましたが、実際に営業を再開してみると、地区的な影響も有ると思いますが、カップル需要が圧倒的に多かったのが印象的でした。
運営を再開した店舗では、地区や曜日で違いがありますが、通常の5~7割程度に回復してきております。
 インフラについては、今回の震災では、一部の地域を除き、ほぼすべてのインフラが一日以上ストップすると言う状況となりました。
 その中で感じたのが、井水等のライフラインに左右されない施設の重要性でした。
 電気はインフラの中で、早く復旧しやすいものと思いますので、井水があり、重油又はプロパンでの燃料ボイラーがあれば、復旧は素早いものとなります(もちろん条件によって変わると思いますが)
 また、下水接続の対応も含めて、通常のランニングコストのみを考えた構成では、選択肢とならない組み合わせも、このような震災の際には有効な事も有るのだなと改めて感じました。

【掲載写真のコメント】
当社のスタッフが仙台港側近の公的建築物(アクセル)という場所でホテル事業部全体会議をやっていた時に被災した時の写真です。
 当社の北関東以北の支配人クラス及びそのサブをする社員全員(6名)が集まった会議中にこの地震が起きました。
この地区は最大10メーターの津波が来て、甚大な被害が出ました。彼らも、車6台全部とその中の荷物を全部流され、まる一日この建物に避難していました。車で逃げるか、残るかで意見が分かれたらしいのですが、駐車場で話あっているうちに、建物上部に避難を促され一命を取り留めた感じだったようです。(車でそのまま津波に流される人たちを結構見たそうです。)
 私も遅れて参加予定だったのですが、バタバタしているうちに時間が無くなって、さあ行こうか!と思った瞬間に地震が来ましたので、あの時もう少し早く行こうと思っていれば、津波に直撃されていたかもと思いぞっとしました。
 なにより、この震災の被害の大きかったホテルでもお客様スタッフ共に人的被害ができなかったことが良かったことです。普段からの訓練の成果が出て、社員不在でもしっかりと避難誘導がアルバイトスタッフのみで出来たことが唯一うれしかった事ですね。

【添付資料】

平成23年3月22日

○○店地震被害状況(初段階)

 
 
▽給排水設備

  • 1.浄化槽
  •  地震と津波により、海水・汚泥・異物混入のため作動不良。現在停止中
  • 2.給排水
  •  機械室配管より漏水確認、機械室側の本建物壁面より漏水確認。
  •  配管破裂の疑いがあるため各機器類は現在停止中。
  • 3.高架水槽、受水槽
  •  高架水槽機能は未確認、受水槽は目視レベルでの漏水なし。
  • 4.ボイラー
  •  異常なしと思われますが、業者点検必要。
  • 5.消火栓設備
  •  異常なしと思われますが、業者点検必要。

▽外回り

  • 1.アスファルト陥没、亀裂
  •  数十カ所確認されます。特に浄化槽回りの陥没は50cmに及び、
  •  地下タンク回りの陥没も酷い状態です。
  •  その他、各所出入り口や駐車場側溝脇等の陥没が多く確認されています。
  • 2.壁面損壊
  •  数十カ所確認されます。柱周り化粧板、御影石の割れがあります。
  •  駐車場の外壁の内壁のクラックは多数確認されています。
  • 3.装飾備品損壊
  •  各所造花壺は全損壊、両面入口の大型壺4個中1個が損壊、
  •  残3個は形状は留めているもののヒビ等は未確認。

▽ロビー・フロア

  • 1.ドア類
  •  自動ドア3カ所のゆがみ(動作未確認)。
  •  お客様用ガラスドア1カ所割れ、従業員用ドアガラス1カ所損壊。
  • 2.2階フロア
  •  11号室前から18号室前までの天井化粧ミラー落下(約15m)

▽バックヤード

  •  落下物のみと思われます。

▽フロント

  •  フロント機器類に関してはアルメックス点検必要。

▽客室

  •  細部状況は未確認ですが、主に落下物のみです。
  •  但し全室テレビ落下のためアルメックス点検必要。
  •  壁面ヒビ割れやタイルヒビ割れは未確認。
  •  また、給排水状況、漏水個所も未確認です。

▽屋上

  •  エアコン室外機が10台前後倒れております。
  •  通電時に室外機漏電が発覚していますので冷媒ガス漏れと業者点検が必要です。
  •  雨漏り等は今後の状況確認となります。