「季刊レジャーホテル」通信⑦

2021.03.31 発信

激変する「NEXTマーケット」
新たな生き残り策が求められる

 本誌編集部では、全国の主要オペレータに対してアンケートを実施し、29社(511ホテル・1万3,370室)の回答をいただいた。

 2020年11月~21年3月の月次の売上げ(前年比)を聞いたのが図表1である。

 
 平均でみると90%台で推移しており、実績が100%を超える回答も寄せられている。この数値に、前号でまとめた「2020年の月次の売上げ実績(前年比)の推移」の数値を並べると、コロナ禍におけるレジャーホテルの堅調ぶりがみえてくる(図表2-a、b)。


だが、コロナ禍による業績悪化が最低限に抑えられたとはいえ、業界が抱える課題が改善されたわけではない。むしろ、コロナ収束後はさらなる悪化が懸念される。いまの状況に安堵するのではなく、withコロナ、afterコロナを超えた「NEXTマーケット」に生き残るための経営・運営戦略の再構築が求められている。

 今後10年後のマーケット環境の変化について聞いたのが図表3である。

  • シティホテル、ビジネスホテルとの競合激化
  • 少子化によるマーケット縮小
  • ホテル利用スタイルの多様化
  • 景気の悪化
  • 価格破壊の浸透

が上位回答となった。①、②、⑤は以前から業界の課題として上げられていたが、コロナ禍で③、④が加わったということである。

 マーケット縮小と他ホテルとの競合が進み、将来的な集客減が懸念されるなか、レジャーホテルの成長戦略に不可欠なのが「収益構造の変革」である。ポイントとして、①「稼働率重視」から「客単価重視」へのシフト、②効率的なコスト削減(企業としての財務体質の改善)の2点があげられる。

 客単価重視の基本戦略は、高い単価が獲得できる宿泊需要の拡大である。また、コスト削減は、企業としての財務体質の改善に直結し、多くの企業が最重視しているのが「人件費」である。
「経営者としていま取り組んでいる最も重要な経営課題」について聞いたのが図表4である。

大きくまとめると、「人材の確保・育成」(19件)、「財務体質の改善・コスト削減」(10件)、「経営戦略の再構築」(6件)となる。多くの企業が、「人材の確保・育成」を最重要課題として取り組んでいることが伺える。「NEXTマーケット」に向けて成長戦略を目指すためには、優秀な人材確保とその育成が不可欠ということであり、さらに、その背景として、政府主導のいわゆる「働き方改革」への対応も指摘できる。

 同改革は、①長時間労働の解消、②非正規社員と正社員との格差是正、③高齢者の就労促進などを目的に推進されているものだが、36524時間営業のレジャーホテルにとっては、「時間外労働の上限規制」「年次有給取得の義務化」「勤務間インターバル制度の普及推進」「中小企業の時間外割増率猶予措置の廃止」など、クリアすべき課題は多い。

 今回のコロナ禍でも、「特別貸与」や「持続化給付金」など行政サポートや公的融資を受けられないなど、業界は依然として差別的な状況下にある。その一方で、カップル需要の獲得において、シティホテルやビジネスホテルとのボーダレス化が進んでいる。少なくとも新法ホテルにおいては、さらなるコンプライアンス遵守に踏み込んだうえで、行政、社会に対する積極的なアピールが必要な時代を迎えているのではないだろうか。そしてそうした取組みが、新たなマーケットの開拓につながるとともに、カップル客の囲い込みにも直結するといえるだろう。

「季刊レジャーホテル」通信

〈レジャーホテル通信⑥〉
第2弾緊急アンケート、8月前年比91.9%と堅調も「アフターコロナ」を見据えた新たな戦略が求められる

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