高級シティホテルからビジネスホテル、カプセルホテル、そしてレジャーホテルと縦横無尽にホテルサービスを斬りまくる! 日本を代表する ホテル評論家 瀧澤信秋 が、いまイケてるレジャーホテルを自ら選び訪問。徹底リサーチし、ゲストに支持されるこれからのレジャーホテルを浮き彫りにしていきます。

第28回

ブルーホテル オクタ(札幌市中央区)

ますます漂う風格
――レジャーホテルに伝統は息づくのか


コロナ禍ですっかり疲弊し切っているホテル業界ではあるが、近年ではインバウンド活況もあり、数多くの新規ホテルが誕生したことは周知の事実。最初から負け試合を想定しているわけはなく、市場に参入する以上は大なり小なり勝てる見込みがあるわけだが、増え続けるホテルにあって勝算という点でいえば、ラグジュアリーから宿泊特化に至るまで「差別化」は大きなポイントだ。

今回訪問した「ブルーホテル オクタ」は、言葉だけで思考停止している印象の差別化を深く考えさせられたホテルだ。

そもそも差別化とは、経営学的にいうとマイケル・ポーター氏が提唱したコストリーダーシップ戦略、集中戦略と並ぶ3つの競争戦略類型のひとつであり、「価格は高くても価値のあるものを提供すれば勝てる」という点に着目、すなわち“顧客が認める特異性”とも換言できよう。少し話が難しくなってしまったが、一方で「価値のあるものを提供できているのか」という問いに関して言えば、デザインや奇抜さなど“これまでに無いホテル”という点ばかりがフィーチャーされているような気がしてならない。

センセーショナルではあるものの、数十年単位でハードを用いたビジネスを続けているホテル事業として成り立っていくのか?という継続性に疑問符を付けざるを得ない施設も散見する。価値とは時間の経過とともに円熟していくものと筆者は考えるが、クラシックホテルというカテゴリーは別としても、「帝国ホテル 東京」などはまさに好例だろう。今後、レジャーホテルが宿泊業として社会認知されていくのかは、こうした恒久的に価値を提供できるホテルをもって、継続性ある事業か否かという点も注目されていく。

レジャーホテルの価値提供という点でいえば、札幌市の「ブルーホテル オクタ」は印象的なホテルであった。真冬に取材訪問したファーストインプレッションは“奥深さ”。極めてシンプルな外観は、周囲の雪と同化するようで境界すらあいまいに見える。表層的に視覚へ入り込む強い印象はなく、ゆえに本来持つ“質”が見えてくる。極限までデザイン性を排したようなシンプルにして質感の高い空間は、見れば見るほどに開業20年という時が年輪のように魅力となっていることを感じる。クオリティ・レジャーホテルとも評せるだろう。

クオリティの追求は、ベッドをはじめとした調度品のひとつひとつによく表れている。全室にかけ流しの天然温泉を配したこともホテルのコンセプトをよく物語っている。各室スタイルは異なるが、ブルーホテル オクタを象徴するのが、一面に設えられた窓から望む札幌競馬場の迫力ある眺めの部屋。これから伝統を刻み続けるホテルの象徴的な光景のように感じた。成長するレジャーホテルと伝統。あなたのホテルは、いま20年後、30年後を考えていますか?


ブルーホテル オクタ
札幌市中央区北15条西19丁目34-7
TEL.011-738-2466

ホテル評論家 瀧澤 信秋
日本で数少ない宿泊者・利用者目線のホテル評論家として、テレビやラジオへの出演、雑誌・新聞連載など、多方面で活躍。著書に「365日365ホテル 上」(マガジンハウス)、「ホテルに騙されるな! プロが教える絶対失敗しない選び方」(光文社新書)など
http://www.takizawa-nobuaki.net/hotel/

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