高級シティホテルからビジネスホテル、カプセルホテル、そしてレジャーホテルと縦横無尽にホテルサービスを斬りまくる! 日本を代表する ホテル評論家 瀧澤信秋 が、いまイケてるレジャーホテルを自ら選び訪問。徹底リサーチし、ゲストに支持されるこれからのレジャーホテルを浮き彫りにしていきます。

第35回

ベッセルイン高田馬場駅前(東京都新宿区)

レジャーホテルの要素と可能性を追求した
ビジネスホテルの駅前スイートルーム


本連載は、レジャーホテル業界誌である「季刊レジャーホテル」誌上に掲載されるものであり、連載タイトルにもある通り、当然にレジャーホテルを取材した内容で構成される。他方、イレギュラーではあるものの、過去の連載においては一般ホテルを取り上げたケースもあった。その真意は、レジャーホテル関係者が参考になるであろう要素が詰まっているということであり、筆者が近年述べてきたレジャーホテルと一般ホテルのボーダレス化を具現するようなホテルかつ客室であるという点も踏まえる。とはいえ、一般ホテルのレジャーホテル業界誌掲載はハードルが高い。

基本的にはNG というホテルがほとんどだ。色眼鏡で見られてしまうというイメージの問題、ステークホルダーへの気遣いということもあるだろう。ゆえに、本連載の掲載が叶う一般ホテルはある種運営も本気、換言すると筋金入りであり、筆者と長きに渡り信頼関係を築いてきたホテルでもある。

そんなイレギュラーなケースにして、今回さらにレアケースとなるのが今年325日に開業した「ベッセルイン高田馬場駅前」だ。

さらなるレアケースの意味するところは、ホテル評論家 瀧澤信秋として名前を出した初の監修ホテルでもあるからだ。ホテル評論家という立場から過去そうしたオファーについては辞退してきたが、コロナ禍という想定外かつ未曾有の事態からの収束フェーズ、宿泊業界の復興という点も踏まえ、ベッセルホテルズからのオファーを受託することになった。

ベッセルイン高田馬場駅前の運営は㈱ベッセルホテル開発。広島県福山市に本社を置くホテル運営会社であり、「ベッセルホテルズ」として宿泊特化型ホテルを全国展開する。客室はもとより朝食、アクセス、大浴場などにも注力することで筆者は長年取材してきたホテルブランドでもある。宿泊特化型にしてインフィニティプールもあるリゾートホテルなども展開、サービス面でも、18歳以下は両親や祖父母との同室での添い寝は無料などユニークさも際立つ。

ベッセルイン高田馬場駅前は、高田馬場駅早稲田口から徒歩約2分、東京メトロ東西線高田馬場駅の4番出口直結という好立地。地上13階建て、1階にはドラッグストア、2階はフロントと朝食ラウンジ、気軽に使える無料のロッカーがある。3~13階にある客室はダブル、ツインを中心に全160室。ベッセルホテルズとしては鳴り物入りの旗艦店という位置づけだ。

クリエイティブディレクションを手掛けたのはUDS㈱の取締役副社長・中原典人氏。「スマートカジュアルをコンセプトに、ホテルとしての機能と、落ち着いてリラックスできる空間やデザイン性を意識しました。宿泊フロアによってメインカラーが異なるのですが、それは泊まるたびに新たな発見をして、長く利用してほしいとの思いから。大学が近くにあるので長期で利用する方も多いため、思い思いの過ごし方をしていただけるように工夫しました」と同氏は語る。

今回ビックアップするのが監修客室であるその名も「BABAスイート」。
同ホテル3階に設けられた2部屋のみの客室だ。ツインベッドとリビングスペースがあり、プライベートサウナも擁する。個人的にはサウナ歴25年のサウナファンになるが、近年のホテルサウナブームも牽引してきた自負もある。今回のプロジェクトにおいて客室のプライベートサウナは絶対条件であった。

一方で、サウナブームの隆盛に比例するようにサウナの設置コストは上がってきた。ストーンに水を掛けるいわゆるローリュウサウナともなると、果たして運営上イニシャルコストをペイできるのだろうかと心配になるほどだ。

そこで今回選んだのが最高峰のスチームサウナ。レジャーホテルで導入されているのを体感しそのパワーに満足してきたものと同じタイプだ。BABAスイートのサウナブースサイズであれば、スイッチ・オンから5分後にスチームが出て15分で蒸気はMAXになる。このスチームサウナの威力は相当で肌も潤う女性にもうれしいサウナだ。バスタブを用いた冷水浴についても、2室のプライベートサウナということで高額なチラー装置は念頭に無く、とはいえ低温を実現すべく洗面所に業界初となるだろう業務用の製氷機を設置した。もちろんドリンクにも利用できる。浴槽にテレビを設置したのもレジャーホテルの要素を意識した。

サウナとセットともいえる外気浴スペースも設置。BABAスイートにはそれぞれテラスがあり、サウナ→水風呂からそのまま出られる動線をとった。周囲が囲われているので、裸で外気浴ができる開放感が魅力だ。高田馬場駅のホームメロディ鉄腕アトムを聞きながらの外気浴は最高である。BABAスイートのみテラスでBBQ15,000円~)も実現。上のフロアにも迷惑がかからないよう無煙ロースターを用いた。JR高田馬場駅前ロータリーを目の前にBBQパーティーが開けるのは最高だが、何よりサウナ~水風呂~ととのいからBBQへ直行できるという個人的に夢だったことが実現できた。準備と片付けはスタッフが担当するのでゲストは楽しむだけ。

客室の冷蔵庫には無料の赤と白のワイン、スパークリング、ビールも冷やされている。小腹が空いたときにうれしいカップスープも置いた。冷蔵庫の横には冷凍庫も設置、冷蔵庫と冷凍庫の扉が観音開きのように開くことにも気遣った。

客室でいえばソファの前に置かれたテーブルであるが、高田馬場は飲食店が多くテイクアウトやデリバリーのニーズも踏まえ、電子レンジはもとより、食事がしやすいようにダイニングテーブルのような高さと広さを意識してセレクトした。また、エアコンの風が直接ベッドへ当たらないよう風防も後付け、いずれもレジャーホテルで疎かになっている部分にもゲスト目線を追求した。

JR山手線駅前・地下鉄直結ホテルにして駐車場にも気遣った。大型車が駐車できる平面駐車場を3台分設置。BABAスイートのゲストは優先して利用できる。駐車場から裏口に入ると客室へ直行するエレベータまで徒歩10秒ほどだ。

全国のベッセルホテルズから人気メニューを一堂に会した朝食ブッフェが好評を博しているが、朝食ブッフェがBABAスイートへピックアップできるデイユース(カップル・ママ会・女子会)も企画中である。同ホテルグループとしてはデイユース&宿泊という複数回転の収益構造への新たな試みとなる。

筆者の評論手法のひとつが業態を超えた横断的評論だ。比べてわかるホテルサービスも視座に、ゲストがより快適に過ごせる客室やサービスを注視していきたい。


ベッセルイン高田馬場駅前
東京都新宿区高田馬場2-17-4
TEL.03-3202-0088

ホテル評論家 瀧澤 信秋
日本で数少ない宿泊者・利用者目線のホテル評論家として、テレビやラジオへの出演、雑誌・新聞連載など、多方面で活躍。著書に「365日365ホテル 上」(マガジンハウス)、「ホテルに騙されるな! プロが教える絶対失敗しない選び方」(光文社新書)など
http://www.takizawa-nobuaki.net/hotel/

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