高級シティホテルからビジネスホテル、カプセルホテル、そしてレジャーホテルと縦横無尽にホテルサービスを斬りまくる! 日本を代表する ホテル評論家 瀧澤信秋 が、いまイケてるレジャーホテルを自ら選び訪問。徹底リサーチし、ゲストに支持されるこれからのレジャーホテルを浮き彫りにしていきます。

第32回

HOTEL LOVE(名古屋市中川区)

ブームやムードを先読みする
エリアトップランナーの実行力


コロナ禍前のインバウンド活況で激増した一般ホテルにあっては、ムードや新たなブームを察知してホテルへ落とし込むことが差別化戦略のひとつとして認知されてきた。時に奇抜なプランとして情報拡散することは、競合が激化する業界にあって生き残るための戦略とも位置づけられてきた。

レジャーホテルにおいてはどうであろうか。トラディショナルな“ラブ”にフォーカス妖艶なムードの施設というよりも、一般ユースの取り込みにも注力する一般施設とのボーダレス上にあるホテルにおいて、巷間のブームやムードの取り込みが見られるように感じる。たとえば、リゾートをテーマにしたレジャーホテルというケースも、近年カテゴリーにかかわらず、リゾートをテーマにした一般ホテルが増加してきたムードと符合する。

本連載では初めての登場となる名古屋のホテルにして、エリアで圧倒的な人気を誇る「HOTEL LOVE」は、ブームやムードの先読みという点において、決して安直ではない客観的なデータに基づく落とし込みを試みる。全86室とレジャーホテルとしては大きな規模であるが、近年のリニューアルに際しうち27室を禁煙室にしたという。これは、レジャーホテル利用者の7割が喫煙者というデータを基にしているとのこと。また、10室は女子会向けの客室としたが、現在では驚異的な予約流入数を誇る。新法ホテルということもあり、同ホテルの約6割というOTA経由の流入数を鑑みた一般ユースの取り込みにもフォーカスした改善で、カップルユースにとどまらず、ファミリーなどによる観光利用も念頭にある。

具体的なサービスの一端として、ルームサービスの提供にもホテルの考えがあらわれている。セントラルキッチンに専任のシェフを配し、たとえばラーメンのチャーシューひとつにしても手づくりを提供する。季節ごとのメニュー開発により食事を愉しみにするリピーターも増加、無料メニューを除いた喫食率は60%を超え供食という点でもカップル、一般ユース(女子会・観光)のバランス感は良いようだ。一方で、一般ユースという点でのハードルが立地。駅から徒歩でのアクセスは難しい。この点でもタクシー利用料金を周辺主要駅からのおおよその料金帯である1,000円を上限にホテルが負担するなど対策を講じる。

ブームといえば、目下一般ホテルではサウナが注目されている。大浴場&サウナを備えるホテルをはじめ、直近では客室にサウナという極めるホテルも注目され始めているが、レジャーホテルでは昔からサウナは定番アイテムのひとつとして認知され、そもそもレジャーホテルだけに客室に備える。リラックスしに行っているのに他人に気遣うパブリックサウナと異なり、自分だけの空間あるいは二人だけのサウナ空間というのは贅沢この上ない。HOTEL LOVEでは22室にサウナを備えるが、たとえば1005号室のサウナではテレビも完備する。同室にはマッサージチェア2台にバーまで備え充実さにあって16時間という長時間のサービスタイムを提供する。

ブームやムードとは距離のある伝統的な“ラブ”で妖艶というレジャーホテルの存在について冒頭で述べたが、“LOVE”というある種ストレートなホテル名にあって、ムードやブームを落とし込むための細やかなゲスト目線、センスを感じるホテルであった。


HOTEL LOVE(ホテル ラブ)
愛知県名古屋市中川区山王1丁目2-1
TEL 052-339-0411

ホテル評論家 瀧澤 信秋
日本で数少ない宿泊者・利用者目線のホテル評論家として、テレビやラジオへの出演、雑誌・新聞連載など、多方面で活躍。著書に「365日365ホテル 上」(マガジンハウス)、「ホテルに騙されるな! プロが教える絶対失敗しない選び方」(光文社新書)など
http://www.takizawa-nobuaki.net/hotel/

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