第29回

人気ブランドの進化と面の回遊で取り込む顧客需要
――存在感際立つ多業態融合ホテル

ホテル業態のボーダレス化については、ホテル評論家になった当初から提言も含めた指摘を続けてきたが、インバウンド活況の頃からその傾向は際立っている。レジャーホテル業界においては、その呼称ひとつにしても伝統的な“ラブホテル”が換言されてきた時系列的な事実のなかで、レジャーホテルというワードが社会に周知されつつあるフェーズ到来も感じる。そうした業態多様化における周知･認知、すなわち情報拡散の端緒となったホテルブランドのなかでも「バリアン」の存在は大きい。

レジャーホテルの要素も併せ持ちつつも、リゾート、ビジネス、シティと多目的に利用されている同ブランドについてはかなり前から取材を続けてきたが、一貫しているのは、単にレジャーホテルと括られることを忌避してきたブランドという点である。そのようななかで、同ブランド系列のプティバリについては、第12回の連載において東新宿店の掲載が叶った。レジャーホテル専門誌ということで掲載はNGと想定しての取材申込みであったが、人気博する多業態融合のブランドだけに、レジャーホテルが今後進むべきスタイルのアプローチのひとつとして参考になるのではないかという筆者の考えを理解いただいた。

その後、ホテルプティ･バリブランドは人気を博し、池袋西口のホテルプティバリ池袋店においてもタワー館が新設、従前のリゾート館も含め全66室のホテルとなったこともあり、同ブランドの進化を探るべく今回取材に出向いた。1階ラウンジの多数ある無料コンテンツは運営会社であるサンザリゾートの十八番ともいえるが、ダーツ／マッサージチェア／24時間無料（飲み放題）アルコール／エンタメ＆カラオケルームなど、多層な世代が遊べるマルチ利用にも資するホテルだ。

特徴的なのが運営会社グループ店舗への“エリア内回遊”が上げられる。運営会社では、レジャーホテルの他にもダイニングレストランやカラオケ施設など、多様なレジャー施設を運営しているが池袋でも同様。至近にグループ施設がある立地にホテルも開業することは、面としてのスケールメリットを活かしたひとつの戦略といえよう。新法ホテルで客室の自動施錠はなく、滞在中の出入り可能という特色も生かしつつ、至近距離にあるエンタメ性の高いカラオケ施設などへもゲストを誘引する。エリア内回遊という点をとってもクローズドなレジャーホテルというイメージにはそぐわない。

ところで回遊といえば、ホテル内に印象的な掲示がある。利用実績に応じて伊豆のグループリゾートホテルへご招待というものだ。そう、運営会社ではリゾートホテルも多数運営している。リゾートをコンセプトにしたレジャーホテルは数多いものの、こちらはリアルなリゾートホテルだ。池袋から話は飛ぶが、伊豆のグループリゾートホテルの大浴場･露天風呂にプティバリも含めた他業態ホテルを運営しているという広告があった。カラオケを利用しバリアンを利用しグループ施設の式場で結婚。そして家族でリゾートホテルを利用…人生を応援するという。人生という長き時間軸にもフィーチャーするという“スケールメリット”すら感じるホテルだ。


ホテルプティバリ池袋店
東京都豊島区池袋2-12-11
TEL.0120-759-194

ホテル評論家　瀧澤 信秋氏
日本で数少ない宿泊者・利用者目線のホテル評論家として、テレビやラジオへの出演、雑誌・新聞連載など、多方面で活躍。著書に「365日365ホテル 上」（マガジンハウス）、「ホテルに騙されるな！ プロが教える絶対失敗しない選び方」（光文社新書）など
http://www.takizawa-nobuaki.net/hotel/