高級シティホテルからビジネスホテル、カプセルホテル、そしてレジャーホテルと縦横無尽にホテルサービスを斬りまくる! 日本を代表する ホテル評論家 瀧澤信秋 が、いまイケてるレジャーホテルを自ら選び訪問。徹底リサーチし、ゲストに支持されるこれからのレジャーホテルを浮き彫りにしていきます。

第30回

HOTEL ROCCO(奈良県奈良市)

オーナー自身がメンテを手がける
「当事者意識」で隙無き進化を続けるホテル


レジャーホテルへ出向くと感じることが多いのが“止まっているホテル”。開業時はさぞかし華やかで快適だったのだろうと想像するものの、建てっぱなしで手を加えてないのでは?と訝しげになってしまう施設に時々出合う。確かにホテルは装置産業であるが、日々のメンテはもちろんのこと時流に合わせたアイディアなどゲスト目線で客室へ落とし込み続けることは重要だ。

そうした進化には資源配分機能といった点も含め、オーナーの“当事者意識”がキーになることは言うまでも無い。以前から一般ホテルのカップルズユース取り込みがレジャーホテルに与える影響について指摘してきたが、とくにコロナ禍において一般ホテルが宿泊1本勝負ではなくなり、高級ホテルにおいても“禁じ手”だったデイユースが「テレワーク」「フレックスプラン」などという名のもとに、後ろ指を指されず堂々と売れるようになった。

宿泊特化型ホテルに至ってはデイユースの打ち出しはもはや当然、あの低料金にして高い快適性と機能性そして清潔感・・・果たしてレジャーホテルは戦えるのだろうか?と考えてしまう。否、評論家的に少々辛辣な表現をすれば、戦いどころかそのスタートラインにすら立てていないレジャーホテルも存するのは事実だ。当事者意識という点でも一般ホテル、とくに小規模な宿泊特化型ホテル等の方がよりリアリティを感じる。

奈良市の幹線道路を走ると目に飛び込むのが明るく印象的な「HOTEL ROCCO」のロゴ。誘われたかのように側道からエントランスへ入ると、ガレージタイプ風の設えもスタイリッシュで見やすい表示が目に入る。新しい雰囲気を醸し出しているが、築40年弱というハードである。ウッディなロビースペースから客室へ向かうと、ヨーロッパ調のゴージャスなタイプからアジアンテイスト、モダン・スタイリッシュと多彩な客室が揃う。やはり聞いた年数ほどの経年感はない。

関西で複数所有・運営されるオーナーに案内をいただいたが、最後に「車を見ます?」と誘われた。高級車自慢?と思い付いていくと…驚愕の光景が。車に工具や機器が山のように積まれているのだ。ホテル設備や機器の修理やメンテナンスをほとんどオーナー自身の手で対応しているとのこと。長年かけて習得した技術という。HOTEL ROCCOも含め関西一円ワゴン車でメンテに廻っているというが、オーナー自身がメンテすることが、ホテルスタッフが施設を大切に管理することに繋がるといい、すなわち、故障の報告も迅速に行なわれ、結果としてゲストが快適に過ごすことに繋がっていると分析できる。

業者に頼めば時間もコストもかかるだろうことは想像に難くないものの、自らの手に負えないゆえに業者の存在もあるわけで、それは至極常識的な話でもある。一方、仮に自身の手でできるのならば、スピード感も然ることながら何より各ホテルの状態をオーナー自身が常に把握できる。(具体的な金額は伏せるが)年間数百万円のコストカットになっているというが、銭金勘定ばかりで無い。まさに「オーナーという当事者意識」の凄さを車に見たかのようだ。レジャーホテルがおかれた状況、そして危機感をひしひしと感じつつ今日もホテルをメンテする。


HOTEL ROCCO(ホテル ロッコ)
奈良県奈良市宝来町1117
TEL.0742-46-9822

ホテル評論家 瀧澤 信秋
日本で数少ない宿泊者・利用者目線のホテル評論家として、テレビやラジオへの出演、雑誌・新聞連載など、多方面で活躍。著書に「365日365ホテル 上」(マガジンハウス)、「ホテルに騙されるな! プロが教える絶対失敗しない選び方」(光文社新書)など
http://www.takizawa-nobuaki.net/hotel/

バックナンバー

 [第36回] Y-HOTEL(広島市中区)
 [第35回] ベッセルイン高田馬場駅前(東京都新宿区)
 [第34回] 555MOTEL GOTEMBA(静岡県御殿場市)
 [第33回] ウォーターホテルK(札幌市中央区)
 [第32回] HOTEL LOVE(名古屋市中川区)
 [第31回] HOTEL STELLATE(東京都新宿区)
 [第30回] HOTEL ROCCO(奈良県奈良市)
 [第29回] ホテルプティパリ池袋店(東京都豊島区)
 [第28回] ブルーホテル オクタ(札幌市中央区)
 [第27回] DESIGN HOTEL BLAX(東京都八王子市)
 [第26回] ホテル 宗像パル(福岡県宗像市)
 [第25回]ホテル トイスト/ホテル ミスト(千葉市中央区)
[第24回]UTILITY HOTEL cooju(埼玉県川越市)
[第23回]SUSUKINO LOVE HOTEL 1(北海道札幌市)
[第22回]ホテルフロンティア(東京都豊島区)
[第21回]HOTEL Marrakech(群馬県高崎市)
[第20回]ホテル SKYLOVE(東京都足立区)
[第19回]HOTEL Roppongi(東京都港区)
[第18回]HOTEL Mai Sakura(奈良県奈良市)
[第17回]ホテルシエロ(札幌市白石区)
[第16回]横浜 カサデフランシア(横浜市中区)
[第15回]現代楽園 高崎店(群馬県高崎市)
[第14回]WATER HOTEL S 橋本店(神奈川県相模原市)
[第13回]ホテル&スイーツフクオカ(福岡市博多区)
[第12回]ホテル・プティバリ東新宿(東京都新宿区)
[第11回]レステイ 所沢(埼玉県所沢市)
[第10回]別邸 SPA HOTEL 1H20 横田base(東京都西多摩郡)
[第9回]HOTEL BRASSINO ASIAN RESORT(東京都町田市)
[第8回]HOTEL LaLa TSUKASA(福岡市博多区)
[第7回]HOTEL SARA(東京都墨田区)
[第6回]HOTEL nest(福岡市博多区)
[第5回]バニラリゾートちゅら(埼玉県三芳町)
[第4回]WATER HOTEL S 国立店 (東京都国立市)
[第3回]HOTEL SULATA 渋谷道玄坂 (東京都渋谷区)
[第2回]HOTEL LEGIAN (千葉県千葉市)
[第1回]HOTEL ASIAN (群馬県高崎市)

「季刊レジャーホテル」通信

〈レジャーホテル通信⑥〉
第2弾緊急アンケート、8月前年比91.9%と堅調も「アフターコロナ」を見据えた新たな戦略が求められる

詳細はこちら

編集長が行く!
レジャーホテル視察ツアー



視聴はこちら


 業界のキーパーソン・企業を紹介する
 季刊レジャーホテルの連載企画

[第29回]
三富 俊和
エコテクソリューション㈱
代表取締役


全文はこちら

 


 業界のキーパーソン・企業を紹介する
 季刊レジャーホテルの連載企画

[第27回]
大越 昭宏
㈱サクシード 代表取締役

全文はこちら

New Open & Renewal

DOUBLE FUNABASHI
[千葉県船橋市]

LinkIcon詳しくはこちら

「季刊 レジャーホテル」最新号


▶︎詳細はこちら
「季刊レジャーホテル143号」


特設ページ(2023年度版)
こちらからお入りください