高級シティホテルからビジネスホテル、カプセルホテル、そしてレジャーホテルと縦横無尽にホテルサービスを斬りまくる! 日本を代表する ホテル評論家 瀧澤信秋 が、いまイケてるレジャーホテルを自ら選び訪問。徹底リサーチし、ゲストに支持されるこれからのレジャーホテルを浮き彫りにしていきます。

第23回

SUSUKINO LOVE HOTEL 1

(北海道札幌市

レジャーホテルのコンセプト化に見る
ライフスタイルホテルとの融合

 ホテル名を聞いていわゆる“コテコテ”を想像し北海道へ出向いた。例年に比べて雪の少ない札幌の街に初めて大雪が降った日の取材であったが、真っ白な視界に現れたのはまるでダイニングバーのような直線的でスタイリッシュなホテルだった。「SUSUKINO LOVE HOTEL 1」のダークトーンに映える赤いサインは、その字面に反してラブホテルというイメージではない。ススキノ南8条界隈、いわゆるラブホテル街にあってその存在感は際立つ。

 ロビーに足を踏み入れても外観のイメージを裏切らない。まるでモノトーンをテーマにしたデザイナーズブランドが運営するブティックのようだ。ロビーの中心には分厚い美術書のような書籍がディスプレスされている。筆者は以前よりレジャーホテルこそ知的欲求の充足をコンセプトにすることは差別化の一手法と提案してきた。それは直情的な性欲がイメージされる宿泊施設ゆえに、捕色的なコンセプトを打ち出すことでよりバランス感が高まると考えるからだ。

 そんなことを思い描きつつ客室フロアへ進むとさらなる文化の香りが。それは“音楽”だ。JAZZにHIPHOP……ライブハウスかジャズバーのような雰囲気に、レジャーホテルにいることを忘れてしまう。これもまた補色的なコンセプトであるが、インデリアデザインの秀逸さで見事に融和している。

 一転、北欧をテーマにしたフロアもある。札幌にあるレジャーホテルということで、こちらはなんとなく北海道との親和性を感じるが、イメージとしてはやはりリゾートホテルだろうか。日々の生活から自然へ回帰することもリゾートホテルステイの醍醐味であるが、限られた条件下で演出するのは困難な作業であっただろうことは想像に難くない。ジャグジーに観賞用タイプの暖炉が設置されているのは初めて見た。

 近年ホテル業界では「ライフスタイルホテル」が花盛りだ。ホテルでは伝統的に価格帯や年代などによるセグメントがなされてきた。一方、ライフスタイルホテルとは、趣味や嗜好に訴求するホテルスタイル。ロック好きな人はこのホテル、環境コンシャスであればこのホテルというようにストライクゾーンを狭めつつも、宿泊者以外も利用できるオープンなラウンジを設けるなど宿泊者以外の人的交流も盛んだ。ワクワクするホテルとも表される。

「SUSUKINO LOVE HOTEL 1」を見てライフスタイルホテルの要素を感じた。クローズドなレジャーホテルのイメージから、どこまでも開かれていてゲスト同士が交流するかのような錯覚に陥る。ストレートなネーミングからは想像できない開かれたホテルだ。


SUSUKINO LOVE HOTEL 1
北海道札幌市中央区南8条西4丁目422-58
TEL.011-563-6220

ホテル評論家 瀧澤 信秋
日本で数少ない宿泊者・利用者目線のホテル評論家として、テレビやラジオへの出演、雑誌・新聞連載など、多方面で活躍。著書に「365日365ホテル 上」(マガジンハウス)、「ホテルに騙されるな! プロが教える絶対失敗しない選び方」(光文社新書)など
http://www.takizawa-nobuaki.net/hotel/

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